第2065回例会報告[2019年8月9日(金)]

会長の時間

 山本新一郎 会長

「ポリファーマシーってなんですか?」

 

一般に、内服している薬は単独では副作用を認めなくても、2剤3剤と併用すると副作用の発生頻度は高くなってきます。その数が、5剤から6剤ぐらいからその副作用の発生率は急に増えます。ですから、国はこのエビデンスに基づいて薬の数を減らそうとしています。このように、多剤服用している状態を「ポリファーマシー」と呼んでいます。そもそも、この「ポリファーマシー」という言葉はそれほど古いものではなく、せいぜいここ3年から4年ほど前から急速に普及してきた言葉です。そのきっかけはこの平成27年12月に出たこの新聞記事ではないかと思います。高騰する医療費の削減に向けて、おしりに火がついている状態の国が打開策の1つとして打ち出してきたもので、国のプロパガンダとも言えます。

その「ポリファーマシー」の状態を改善していこうという動きは、今、薬剤師が中心となって起こっています。【図1】は、「日経DI」という全国の薬局に無料で送られてくる雑誌で、薬局薬剤師には最もよく読まれている雑誌の1つです。そこにこのように、大きくこの「ポリファーマシー」の特集記事が組まれるほどですから、いかに注目度が高いかわかるかと思います。しかし皆さん方からみれば、ちょっと不思議に思いませんか?・・・というのも、薬を売っているものが薬を真剣に減らそうとしているのです。つまりいままで5剤使っていた人が2剤になれば当然それだけ薬局の売り上げは減ります・・・。実際に今薬局の売り上げは年々減り続けていて、薬局自体も減少しています。いよいよ薬局もサバイバルの時代に入ったといわれています。

そういうことをしてまで、どうして今薬剤師は薬を減らそうとしているのでしょうか?薬剤師の本来の役割は、“薬を売る”のではなく、薬を通して“薬の安全性を提供する”のが目的です・・・!というのが真っ当な理由ではありますが・・・。実際のところ、「犬もおだてりゃきに登る」という諺がありますが、あまり高い木に登ったことがない薬剤師がちょっと国におだてられてスルスルと木に登ってしまっているのが本音のところかもしれません・・・。

 

卓話

「成年年齢の引き下げについて」

池内清一郎会員

池内清一郎会員

1 これまで日本の成年年齢は20歳

成年年齢は民法で20歳と決められている。

2 2022年4月1日から成年年齢が20歳から18歳になる。

これにより 、2022年4月1日に18歳、19歳の方は2022年4月1日に新成人となる。

現在、未成年の方は、成年になるのは次のとおり。

2002年(平成14年)4月1日以前に生まれた人  20歳の誕生日が成年

2002年4月2日から2004年4月1日生まれの人 2022年4月1日に成年

2004年4月2日以降に生まれた人         18歳の誕生日に成年

3 成年年齢改正に至った理由

公職選挙法の選挙権年齢 憲法改正公民投票の投票権年齢 18歳

国政の重要な判断に参加する年齢を引き下げる政策が進められてきた。

市民生活の面でも18歳を大人として扱うのが適当であるとのことから18歳に引き下げられることとなった。

4 民法が定める成年年齢にはどのような意味があるのか

(1) 一人で有効な契約をすることができる年齢であるという意味

(2) 父母の親権に服さなくなるという年齢という意味

5 では、成年年齢の引き下げにより生活の面で何が変わるのか

上記(1)については

18歳、19歳の方は、親の同意がなくても、携帯電話の契約、アパートを借りる

契約などをすることができる。

また、支払能力があれば、クレジットカードの契約、ローンを組んでの自動車の購入契約をすることができる。

しかし、2020年4月1日よりも前に18歳、19歳の人が親の同意を得ずに締結した契約は、施行後も取り消すことが可能

上記(2)については、の親の親権に服さなくなるという意味では、自分の住む場所(居所)や進学や就職などの進路について自分の意思で決めることができるようになる。

その他、10年有効のパスポートの取得、公認会計士や司法書士などは試験に合格すれば就くことができる。

6 成年年齢に引き下げによっても変わらないもの

飲酒 喫煙、競馬、競輪、競艇の投票権の購入はできない。

7 養育費の問題

A 成年年齢の引き下げにより養育費の支払期間は18歳までとなるのか

養育費の具体的内容は、こどもが未成熟で経済的に自立することが期待できな

い場合に、両親の経済的事情などをもとに個別に判断されるものであるので、成年年齢が引き下げられたから直ちに養育費の支払期間が18歳になるわけではない。

B では、養育費について「子が成年に達するまで支払う。」という合意がなされている場合、成年年齢の引き下げにより養育費の支払期間が変わるのか

改正法の施行前に、「子が成年に達する日が属する月まで毎月5万円を支払う。」という内容の合意が出来ている場合でも、合意された時の成年年齢が20歳であったこと、当事者が養育費の支払期間を定めるにあたって考慮した事情が成年年齢の引き下げにより変わるものではないと考えられるので、成年年齢が引き下げられたとしても期間について変更はないと考えられる。

今後、養育費について合意をする場合は、支払期間については、「子が 22歳に達しアット後の3月まで。」というように明確に定めるのがいいと思います。

8 成人式の問題

成人式は、20歳の方を対象に行われているのが一般的。

18歳が成年年齢となった場合、成人式も18歳の方を対象とするのか。

成人式の対象年齢や行う時期やその方法については、法律による定めはなく、各自

治体の判断で実施されている。

現在のところ、18歳の方を対象に実施すると、高校3年生の1月という受験シー

ズンや就職間近という時期に実施するのが適切かという問題があり、これまでどおり20歳の時に行う自治体が多いように思われます。

9 18歳、19歳の方をねらった悪徳商法による消費者被害の懸念

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